インプラント・コラム
親知らずが隣の歯を虫歯にするって本当?
―放置すると“大事な奥歯”が危険にさらされます―
「親知らずは痛くないから、そのままでいいですよね?」
よくあるご質問ですが、実は“痛みがない親知らず”ほど静かに問題を起こしていることがあります。特に注意が必要なのが、隣の歯(第二大臼歯)に虫歯を作ってしまうケースです。
親知らずは“横向き”に生えることが多い?
親知らず(第三大臼歯)は、20歳前後で一番奥に生えてくる永久歯です。しかし、顎のスペースが足りないと、斜めや横向きに埋まったままになることがよくあります(これを水平埋伏智歯といいます)。
このように正常に生えていない親知らずは、歯ぐきの中や一部だけ露出した状態になり、歯ブラシが届きにくいため、汚れや細菌がたまりやすくなります。
隣の歯が虫歯になるメカニズム
親知らずが横向きに生えていると、手前の第二大臼歯との間に“歯ブラシが届かない隙間”ができます。ここに食べカスやプラークが蓄積しやすくなり、見えない場所からじわじわと虫歯が進行してしまうのです。
この虫歯は、かなり深くまで進行してからでないと自覚症状が出にくく、**気づいたときには手前の歯の神経までやられていた…**ということも珍しくありません。
実際、親知らずそのものよりも「その隣の健康な歯が虫歯や歯周病で失われる」ことで、後悔される方も多いのです。
実際の症例
30代男性。右下奥に違和感を覚え来院。レントゲン検査で、横向きに埋まった親知らずとその前の第二大臼歯の間に大きな虫歯を確認。
第二大臼歯は神経まで虫歯が進行しており、根管治療が必要に。親知らずは将来的なリスクも考慮して抜歯。
患者さんからは「痛みもなかったのに、こんなに悪くなっていたとは…」と驚かれました。
痛みがなくても、検査が必要です
親知らずに痛みがなくても、それは問題が起きていないという意味ではありません。特にレントゲンを撮って初めてわかるような**“隠れ虫歯”**は多く、定期的なチェックがとても重要です。
「親知らずは残せるものなら残したい」というお気持ちもわかりますが、手前の大事な歯を守るためには、早めの判断が必要な場合もあります。
当院での対応
当院では、CTやパノラマレントゲンによる詳しい診査を行い、親知らずの位置・角度・周囲の骨や神経との関係をしっかり確認したうえで、
・抜歯が必要かどうか
・タイミングはいつが最適か
・安全に抜歯するための方法(CTガイド、日帰り手術)
をご提案しています。
親知らずについて気になる方は、「痛くなる前」「虫歯になる前」に、ぜひ一度ご相談ください。“抜くかどうか”を決めるのは検査のあとでも遅くありません。