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「下歯槽神経に近接した症例におけるインプラント治療の戦略」

神経との距離、どう確保する? 〜下顎臼歯部インプラントの慎重なアプローチ〜

インプラント治療で最も注意が必要な解剖学的構造のひとつが、**下歯槽神経(Inferior Alveolar Nerve)**です。特に下顎臼歯部では、骨高が不十分なケースにおいて、神経損傷のリスクが高まり、術前の正確な評価と戦略的アプローチが求められます。

【症例紹介】

患者さんは58歳男性。右下6番欠損部へのインプラント治療を希望し来院。CT画像により、残存骨高は約7mm、下歯槽神経までの距離は4.5mmと判明。通常サイズのインプラントでは神経損傷リスクが高いため、短径インプラント(ショートインプラント)による低侵襲戦略を選択しました。

選定したのは直径5.0mm、長さ6.0mmのワイドショートインプラント。初期固定を十分に確保できたため、骨造成を伴わず1回法で埋入。治癒後は機能的にも問題なく、患者満足度も高い結果となりました。

【神経近接症例での対応戦略】

  1. ショートインプラントの活用
     近年のデータでは、6〜8mmのショートインプラントでも長期安定性が報告されており、安全性と予知性を両立できます。

  2. 傾斜埋入(チルト)
     神経を避けるために、埋入方向を調整しながら骨量のある部位に埋入する「傾斜埋入」も有効な選択肢です。

  3. 骨造成併用(GBRやオンレイグラフト)
     骨高が不足しているが、幅は確保できる場合、垂直的骨造成を検討することもあります。ただし、治療期間は長くなります。

  4. CTとシミュレーションソフトの活用
     術前のデジタルプランニングにより、神経との距離をミリ単位で把握し、安全な埋入を設計します。

【まとめ】

下歯槽神経との距離が限られている場合、無理な埋入は神経麻痺や疼痛などの重大な合併症を招くリスクがあります。しかし、ショートインプラントや傾斜埋入、骨造成といった選択肢を組み合わせることで、安全で確実な治療を行うことは十分可能です。

大切なのは、術前に「神経との正確な距離を把握し、選択肢を比較検討できること」。患者さんの生活の質を損なうことなく、機能と審美のバランスを保った治療の提供が求められています。

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