親知らずや難しい抜歯が無事終わっても、「それでおしまい」ではありません。抜歯後の傷口(抜歯窩)がきれいに治るかどうかは、術後のケアに大きく左右されます。今回は、抜歯後の消毒や術後管理について、当院で行っている対応と、患者さんにお願いしている注意点をご紹介します。
■ 抜歯後の傷は“生きた組織”です
抜歯したあと、歯があった部分にはぽっかりと穴(抜歯窩)が空きます。この部分は血液で満たされ、血餅と呼ばれる“かさぶた”のような血の塊が形成されます。これが自然治癒のスタート地点です。
ところが、この血餅がうまく保たれなかったり、感染を起こしたりすると、「ドライソケット」や「術後感染」などのトラブルを引き起こすことがあります。
■ 当院での術後管理の流れ
① 抜歯当日
止血を確認し、ガーゼを数分程噛んでいただきます。
内服薬(抗生剤・鎮痛剤)を処方し、服用方法を丁寧にご説明します。
必要があれば、痛み止めの頓用も処方します。
② 翌日または翌々日:消毒
抜歯後の感染リスクを抑えるため、翌日に来院いただき、創部の消毒と状態の確認を行います。
食べ物のカスが入りやすい部位なので、必要に応じて洗浄を行い、経過を写真で記録することもあります。
③ 1週間後:抜糸(縫合した場合)
抜歯後に縫合を行った場合は、術後7〜10日程度で抜糸します。
傷口が問題なく閉じていれば、そのまま治癒観察へと移行します。
■ 抜歯窩に“詰まったもの”が危険信号に
特に注意すべきなのは、抜歯窩に食べかすや細菌が入り込んで炎症を起こした場合です。
このような感染状態を放置すると、歯ぐきの腫れだけでなく、顎の下や首のリンパ節が腫れたり、発熱・倦怠感などの全身症状が出ることがあります。ひどい場合は、頬や喉の腫れが広がり、呼吸に関わるリスクもあるため、軽視できません。
当院では、こうした事態を防ぐために、抜歯後1〜2日目の早期消毒・洗浄を徹底しています。抜歯窩に汚れが詰まりやすい下顎の親知らずなどでは、特に重要なステップです。
患者さんにお願いしている術後の注意点
強くうがいしすぎない
初日は特に、うがいのしすぎは血餅を流してしまうためNG。優しくゆすぐ程度で十分です。当日の飲酒・運動・長風呂は避ける
血行が良くなりすぎると出血のリスクが高まります。処方された薬は指示通りに服用
抗生剤の中断や飲み忘れは感染リスクを上げる原因に。喫煙は数日間控える
喫煙は血流を悪くし、傷の治りを遅らせます。食事は片側で、やわらかいものを
刺激の少ない、ぬるめの食事で様子を見ましょう。
■ 術後トラブルは早めに相談を
もし以下のような症状が出た場合は、早めにご連絡ください。
抜歯後3日以上経っても強い痛みが続く
口臭がひどい、白い膿のようなものが出る
腫れがどんどん大きくなっている
唇や舌のしびれが戻らない
これらは、ドライソケット、感染、神経の圧迫などが疑われる状態です。早期の対処で治りがスムーズになります。
■ まとめ
抜歯は“して終わり”ではなく、“終わってからが本番”です。術後の管理と消毒を丁寧に行うことで、治癒が早まり、トラブルも防ぐことができます。
当院では、抜歯後も最後まで責任を持ってケアする体制を整えています。抜歯後の不安や疑問があれば、どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。きれいに治るまで、しっかりサポートいたします。