「親知らずは抜いた方がいいですか？」という質問は、非常によく聞かれます。
親知らず（智歯）の生え方や位置は人によって大きく異なり、状況に応じて抜いた方が良いケースと、無理に抜かなくてもよいケースがあり、人によって異なります。
■ 抜歯をすすめるケースとは？
以下のような状態であれば、親知らずの抜歯が推奨されます。
1. 繰り返す炎症や痛み
親知らずの周囲は汚れが溜まりやすく、智歯周囲炎を起こすことがあります。腫れや痛み、口が開きづらくなる、口臭などの症状があれば、抜歯の適応です。
2. 隣の歯（第二大臼歯）への悪影響
斜めや横向きに生えている親知らずは、手前の歯に食い込んで虫歯や歯周病の原因になることがあります。大切な隣の歯を守るために、親知らずを抜くことが望ましいのです。
3. 虫歯になっているが治療が難しい
親知らずは奥まっていて治療器具が届きづらく、虫歯治療が困難です。再発のリスクも高いため、抜歯が選択されることが多くなります。
4. 矯正治療や噛み合わせへの影響
親知らずが生える力によって歯並びが乱れたり、かみ合わせに支障が出たりすることがあります。矯正中や矯正後の安定のために、抜歯を選ぶこともあります。
■ 抜かなくてもよい親知らずとは？
逆に、以下のような条件を満たしていれば、経過観察で済むケースもあります。
完全に骨の中に埋まっていて、症状がない
真っ直ぐ生えていて、上下の歯としっかり噛み合っている
歯ブラシが届き、清掃が十分に行える
将来ブリッジの支台歯などに活用できる可能性がある
これらの条件に該当する場合は、抜歯によるリスクを冒すより、定期的な観察と予防ケアを重視する方が安全と判断されることもあります。
■ 重要なのは「診断」と「タイミング」
親知らずは、20代で完全に萌出する前後の時期が、もっとも抜歯しやすく、回復も早いとされています。骨が柔らかく、癒着も少ないためです。
一方、30代以降になると骨が硬くなり、抜歯後の腫れや痛み、回復に時間がかかる傾向があります。また、根が曲がったり、神経に近づいてくることもあるため、「いまは痛くないけどどうしようかな」と思っている時こそ、診断を受けるチャンスです。
当院では、必要に応じてCTを用いた3D診断で、神経との距離や歯の位置を正確に把握し、リスクの有無や抜歯の必要性を丁寧にご説明します。
■ まとめ
親知らずは「全員抜くべき」ではありません。しかし、問題が起きてからでは遅い場合もあります。
抜いたほうがいいか、様子を見るべきかは、正確な診断と将来のリスク評価が不可欠です。
「抜くか迷っている」「特に症状はないけど心配」という方も、ぜひ一度お気軽にご相談ください。将来のトラブルを防ぐための第一歩になるかもしれません。